相続、遺贈並びに相続時精算課税を適用した贈与によって財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割相当の金額が加算されます。なお、被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続人の子が相続開始前に死亡した時や相続権を失ったためその孫が代襲相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。また、相続時精算課税適用者が相続開始の時において被相続人の一親等の血族に該当しない場合であっても、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した時において被相続人の一親等の血族であった時は、その財産に対応する一定の相続税額については2割加算の対象とはなりません。
FAQ
相続開始前7年以内の贈与加算とは?
相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与時の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を加算します。また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されます。
加算する贈与財産の範囲は、被相続人から生前に贈与された財産のうち相続開始前7年以内に贈与されたものです。7年以内であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。
加算しない贈与財産の範囲は、
⑴贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
⑵直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
⑶直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(上記の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。)
⑷直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(上記の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。)
控除する贈与税額は、相続税の課税価格に加算された贈与財産に係る贈与税の税額です。ただし、加算税、延滞税及び利子税の額は含みません。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度とは、贈与した年の1月1日において60歳以上の特定贈与者から、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の推定相続人である子又は孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる制度です。相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択した年以降、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。贈与税額は特定贈与者ごとに贈与財産価額の合計額から基礎控除額110万円を控除し、特別控除額(限度額2500万円ですが、前年以前の贈与において、既にこの特別控除をしている場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出します。なお、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除して贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の価額)から基礎控除額を控除した残額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。その際、相続税から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
※1 相続時精算課税は、原則として、①贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であり、②受贈者が同日において18歳以上で、かつ、贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫である場合に選択することができます。
なお、相続時精算課税を選択した場合、その後、同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ変更することはできません。
※2 特定贈与者とは、相続時精算課税の選択に係る贈与者をいい、令和5年分以前の贈与税の申告において相続時精算課税を選択した場合も含みます。
※3 同一年中に、2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分します。
(注) 相続時精算課税を選択した場合、その特定贈与者からの贈与について暦年課税の基礎控除の適用はできません
「地積規模の大きな宅地の評価」とは?
Ⅰ.「地積規模の大きな宅地」とは
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいいます。
(注1) 次の(1)から(4)のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。
(1) 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号または第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)に所在する宅地
(2) 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
(3) 指定容積率が400パーセント(東京都の特別区においては300パーセント)以上の地域に所在する宅地
(4) 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地
(注2) 三大都市圏とは、次の地域をいいます。
(1) 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯(2) 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域(3) 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
Ⅱ.「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものとなります。また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。
Ⅲ.評価方法
(1) 路線価地域に所在する場合
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
(2) 倍率地域に所在する場合
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地については、次に掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。
① その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
② その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
(注)市街地農地等(市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林および市街地原野をいいます。)については、その市街地農地等が宅地であるとした場合に「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地に該当するときは、「その農地等が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額」について「地積規模の大きな宅地の評価」の定めを適用して評価します。
Ⅳ.規模格差補正率
規模格差補正率は、次の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨てます。)。
上記算式中の「」および「」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
(1) 三大都市圏に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅 地区、普通住宅地区 |
|
---|---|---|
500以上 1,000未満 |
0.95 | 25 |
1,000以上 3,000未満 |
0.90 | 75 |
3,000以上 5,000未満 |
0.85 | 225 |
5,000以上 | 0.80 | 475 |
(2) 三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅 地区、普通住宅地区 |
|
---|---|---|
1,000以上 3,000未満 |
0.90 | 100 |
3,000以上 5,000未満 |
0.85 | 250 |
5,000以上 | 0.80 | 500 |
非上場株式についての贈与税の納税猶予及び免除の特例とは?(法人版事業承継税制)
Ⅰ.法人版事業承継税制とは?
法人版事業承継税制は、後継者である受贈者が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税の納付が免除される制度です。
平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、これまでの措置(以下「一般措置」といいます。)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置(以下「特例措置」といいます。)が創設されました。
Ⅱ.特例措置と一般措置の比較
特例措置 | 一般措置 | |
事前の計画策定等 | 特例承継計画の提出 (平成30年4月1日から令和8年3月31日まで) |
不要 |
適用期限 | 次の期間の贈与・相続等 (平成30年1月1日から令和9年12月31日まで) |
なし |
対象株式 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
納税猶予割合 | 100% | 贈与:100% 相続:80% |
承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
雇用確保要件 | 弾力化 ※雇用確保要件を満たさなかった場合には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第20条第3項に基づき、要件を満たさなかった理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があります。 |
承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 | 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除 | なし (猶予税額を納付) |
相続時精算課税制度の適用 | 60歳以上の贈与者から18歳以上の者への贈与 (租税特別措置法第70条の2の8等) |
60歳以上の贈与者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 (相続税法第21条の9・租税特別措置法第70条の2の6) |
Ⅲ.対象者または対象物
先代経営者から非上場株式等の贈与を受けた後継者の方